泥水のみのみ浮き沈み
勝新太郎対談集
文藝春秋:刊
1400円(税込み)
久々に、元気が出る本が登場した。日本の財産、日本の至宝ともいえる、あの勝新太郎の対談集「泥水のみのみ浮き沈み」だ。
あの黒澤明でさえ、それなりの妥協をしつつ映画を撮っている今の日本で、勝新太郎という、ひたすら芸と映画だけで生きている人の吐く言葉は、もはや全てが芸談だし、全てがエンターテイメントだ。だから、そこで話されている言葉は、いちいち吹き出してしまう程おかしいし、同時に、その奥に潜む巨大な含蓄の塊は、そんじょそこらの蘊蓄では歯が立たないほどにすさまじい。
収録されている対談は、全て文藝春秋('92年6月号から)に掲載された物で全部で8つ。事件から間もない時期に行われた、映画評論家白井佳夫との「わが『パンツの中の真実』」。ビートたけしとの芸人対談「だから我らは嫌われる」。三國連太郎との艶話&芸談「女房替えるも芸のうち」。瀬戸内寂聴とのアウトロー同士対談「中村玉緒に浮気のすすめ」。石原慎太郎との、裕次郎を偲びつつのシンタロウ対談「侠気について」。森繁久彌のスケベ話を掘り返す「泥水のみのみ浮き沈み」。小説「下天は夢か」に惚れ込んだカツシンが直接作家に聞く、津本陽との「信長と秀吉について」。そして最後は、あの大女優中村玉緒を迎えての夫婦対談「離婚を考えるヒマもない」。
ほら、タイトル見ただけでも読みたくなってきたでしょ。面白さは保証します。