「玩具修理者」
漫画:MEIMU 原作:小林泰三 角川書店 780円(税別)

予想を超えた大胆なアレンジで生まれたもう一つの恐怖

 小説とマンガは、言うまでもなく全然別のメディアだ。どちらも、言葉を使うし、物語を語るのだけれど、それ以外の共通点は無いと言ってもいい。言葉でしか伝わらないこともあるし、ビジュアルでしか伝わらないものもあるのだから、その両方があって、それぞれに違う種類の物語を語っている(だからビジュアルの方が分かりやすいというのは幻想。やたら図版を増やして曖昧な説明しかしないパソコン雑誌は反省するように)。
 この作品は、小林泰三のホラー小説を材料に、MEIMUがマンガとして再構成したもの。だから、物語も大幅にアレンジされているし、そこで語られる恐怖の種類さえ異なっている。しかし、そのくらい大胆な作り替えをしなければ、マンガとして成立しないし、マンガにする意味もない。二人の主人公を一人にまとめるなんて作業は序の口なのだ。
 マンガも怖いし、原作の小説も怖い。物語の大筋は同じようなものだが、そこで描かれる恐怖は、似ているようで、違う。もちろん、それらを読んで感じる恐怖も別物。メディアが違うというのは、こういうことだ。うまくいけば、一つの素材から、いくつもの傑作が生まれてくる。その労力もオリジナルを考えるのと同じだけど。