Guiter

オープニング

 夜の広い舗道、人通りも多いが、通るのはほとんどが若い男女。
その道の端に座っている10人程の10代の男女。いちゃついてるのもいれば、クスリでぼんやりしてるのもいる。妙にギラギラしてるのもいて様々。足下には、石ころやシェイクのカップなどのゴミが積んである。
時折、そのゴミを、一人で歩いてくる気の弱そうな男女に向かって投げつけては、ギャーギャー笑っている。

シーン1

溜っていた10人の男女の内5人が、練習スタジオでロックバンドの練習をやっている。あまり真面目にはやっていない。ライヴのように、曲間にMCを入れたりしている。練習が終わり、4人は一緒に帰る。ギターの女の子は「用事がある」と言って、一人、別の道へ。
女の子、エレキギターのソフトケースを肩から提げて歩いている。女の子は小柄でややパンク系。向こうから、ベースのソフトケースを肩から提げた大柄の女性が歩いてくる。
すれ違いざま、ギターがちょっとぶつかる。女の子は反射的に「オバン気張るんじゃねえよ」とつぶやく。ベースの女性も「弾けんのかよ」と応える。
喧嘩を始める二人。

シーン2

再びオープニングと同じ舗道。同じように今度は15人程の男女が溜っている。同じように物を投げつけたりしている。
ベースの女性が女二人連れで歩いてくるのを、ギター少女が見つけて、周りの連中に喧嘩の事を話す。
その二人連れに集中して物を投げる連中。知らん顔で通り過ぎようとする彼女たちに、にやにやしながらついていきながら、更に物を投げる。だんだんエスカレートして火のついたタバコやハンバーガーなども投げる。誰かが思いっきり投げた石が顔に当たる。「ざまみろっ」と叫ぶギター少女。
見て見ぬふりをする通行人。
いきなり仲間の一人がデカイ男(27才くらい)に殴られて吹っ飛ぶ。見ると3人連れで、ベースの女性達の知り合いらしい。乱闘になり、15人いた彼らは全部ボロボロにされる。女の子達も殴られるが、ギター少女は一人で逃げる。後ろからベースの女性の「一人逃げるわよっ」という声が聞こえる。

シーン3

シーン1と同じスタジオのロビー(というか、スタジオが空くまで待ってる所)でギター少女のバンドがスタンバイしている。これから入るスタジオはまだ前のバンドが練習中で、中からやたらと巧いアシッドジャズ系の音が漏れ聞こえる。
「うめえなあ」とリーダー格の少年が言う。「ケッ、おっさん音楽」と言いながらギターのチューニングをしているギター少女。
スタジオの扉が開き、前のバンドの人々が出てくる。「おっ、こないだのガキじゃん」と一人が言う。
「こないだはどうも」とリーダー格の少年があやまりながらスタジオに入ろうとする。「聞かせてもらおうかな」ベースの女性が笑う。
ギター少女、いきなりギターを振り上げてベースの女性を襲うが、周りに羽交い締めにされる。「弾くより似合ってるじゃない」ベースの女性が言い、どっと笑う。
ギター少女、周りになだめられながら、スタジオに入る。ドアを閉める直前、またベースの女性の笑い声がして、ギター少女は掴まれている腕を振りきって、ベースの女性に襲いかかる。ギターを思いっきり振り下ろす。間一髪で男の手に引っ張られて避けるベースの女性。ギターは床に叩きつけられる。
「危ねえな、こいつ」などと言いながらアシッドジャズ・バンドはスタジオを出ていく。ベースの女性は、引っ張ってくれた男に抱き抱えられたまま、ギター少女を見て笑う。
ギター少女、出ていく彼らを睨み付けながら泣いている。ギターは弦の一本も切れていない。勿論、壊れてもいない。
あっけにとられている自分のバンドのメンバーに向かって「練習するよ」と言い、スタジオに入るギター少女。

ラストシーン

スタジオの中。ちょっとだけ傷ついたギターのボディをなでながら、チューニングメーターをつなぐギター少女。