幻冬舎編「花は紅 団鬼六の世界」
幻冬舎 1500円
時代のヒーロー団鬼六を
読まずして物語は語れない
子供の頃、性的に晩生だった私は、そういうものに興味を抱き始めた頃、周りの友達は疾うに先を行っていることを知って愕然とした。何とかして、気づかれないうちに追いつき、追い越さねばならない、と思い、手に取ったのが、団鬼六の「花と蛇」だった。とりあえず、これを読んでおけば大丈夫ではないかと、小学校五年生の私は、何故かそう思い込んで、何だかよく分からないまま、あの膨大な小説を読んだ。
読んでいるうちに、元々の目的を忘れて、その面白さに夢中になった。セックスやSMのことは、やっぱりよく分からなかったけれど、凄く面白い、ということだけは分かった。しかも「花と蛇」を読んだということだけで、私は同級生達の会話に入れてもらい、実はよく分からないのに、みんなが一目置いているような感じになって、不思議な気がした。
その時から、団鬼六は、私のヒーローになった。将棋ものもエロものも同じように面白くて凄い。ほとんど、人生の教科書と言ってもいいかもしれない。その描写の美しさ、次々と繰り出されるサービス精神満点のシチュエーション。まだ団鬼六を体験していない人は、ぜひ、この本を読み、そして「花と蛇」を読んで欲しい。本屋で買うのが恥ずかしくても、団作品はインターネット上でデータで購入できるから大丈夫。