結婚は命がけ
ナンシー・ピカード:著
宇佐川晶子:訳
ハヤカワ文庫:刊
480円(税込み)
「元気なブロンド娘ジェニーの冒険を描く新シリーズ。」シリーズ第二作(日本語翻訳版としてはこの本が最初に出版された)「恋人たちの小道」には、こういうあおり文句が付いていた。女探偵物、とりわけセクシーで行動的な女の子が主役のミステリが大好きな僕は、すぐにその本を購入したのだが、その点に関しては全然期待はずれだった。カーター・ブラウンの「乾杯!女探偵」のようなものでは無かったわけだ。でも、決してつまらなかったわけではない。
主人公ジェニファー・ケインは33才。財団の管財人を職業とする、立派な大人の女性だ。一作目の「死者は惜しまない」では、慈善事業問題、二作目では開発計画の汚職と身近な社会問題の絡む殺人事件を、女性が生きていくという現実を絡めながら、恋人の刑事と共に解決していく。だからといって社会派ミステリというわけではないから、面白い。
この第三作「結婚は命がけ」では、夫による妻の虐待問題を扱っている。しかも、ついにジェニファーと恋人の刑事ジェフも結婚する。自分の結婚を前に、不幸な夫婦生活をこれでもかと見せられるというのも相当ハードだが、事件そのものも陰惨で、救いはない。そこをどうにか滅入らずに読めるところが、伊達にマカヴィティ賞最優秀長編賞ではないというところか。しかし、この犯人、なんだかシャイニングみたいだけど、ちょっと書き込み不足で、唐突な感じは受ける。
それにつけても結婚の恐さよ。