「子供の本がおもしろい!」
納富廉邦・吉田メグミ共著、アスペクト、1200円
子供の頃の、ドキドキワクワクするような興奮を忘れられない人たちへ贈る、最強の面白本ブックガイド
主人公がいて、何か事件が起こり、その事件を通じて、主人公たちが、ほんの少し成長したり、事件の前とは、ちょっとだけ変化していたりする。そんな物語を読みたかったら、子供向けの小説が一番だ。最近の、ミステリやホラー小説のブームを見ても、みんな、そういう物語が読みたいんじゃないの?とか思う。殺人事件とか、恐怖体験とかを経て変化していく登場人物たちの物語。
ドロドロした恋愛とか、イジメ、老人問題、戦争といった社会的な問題、生きる意味とか、思想とか、そういうものもいいけど、それを前面に押し出して、テーマとして主張されると、せっかく本を読んでいるのに、何でそういう重い面倒くさい現実を持ち込むんだろう、と思うこともある。現実性は、ドラマを支える一要素でいい。問題は、その物語がワクワク、ドキドキさせてくれて、読み始めたらやめられなくて、読み終わったら、ちょっと感動したり、切なくなったり、嬉しくなったりする、そんな、子供の頃のような読書体験の楽しさをもう一度味わいたいと思ってる人は沢山いるはずだ。
でも、意外とそういう本って少ない。子供向きの本、特に、中学生から高校生あたりを対象に書かれた小説には、そういうのが沢山あるんだけど、例えばインターネットで「児童書」とか「児童小説」とかで検索しても、絵本関係とか、教育関係のものばかりヒットするから、実は、児童書が物語の宝庫であることに気がつかない。
最近ようやく、はやみねかおるのミステリや、美智子皇后の講演などで、児童書の魅力に目をつける人が増えてきたけど、一口に児童書といっても幅広いから、中には、単に説教臭いのとか、幼稚なだけのとかも多い。
大人の鑑賞に堪えて、しかも、ドキドキワクワクさせてくれる物語は、インターネットをもってしても、どうやって探せばいいのか分からないのが現状だ。
という状況の中で、この「子供の本がおもしろい」が登場する。実際に読んでみて、途中で本をおくことができなかった物語だけを三百冊以上も紹介した、最強の面白本ブックガイドだ。もともと、児童小説は、飽きっぽくて集中力のない子供に向けて書かれた物語だから、そこには、作者の「面白がらせてやろう」という工夫が詰まっている。かつて「ねらわれた学園」とか「少年探偵団」なんかに盛り上がった興奮を、もう一度取り戻せるよ。