「踊る大捜査線 湾岸警察署事件簿」
君塚良一著 キネマ旬報社 2381円(税別)
シナリオを読む楽しみは、設計図を見る楽しみ
テレビドラマがここまでブレイクしたのも久しぶりだけど、その人気に応えて、「踊る大捜査線」の関連書籍も沢山出た。ノベライゼーションは、テレビの連続ドラマだった分を収録したものと、スペシャルや映画を収録したものの二冊がでているし、映画のあおりのための本や、実際の警察機構などとの比較などを行った研究読本なんてのまで出ている。ノベライズは、登場人物の一人称で語らせたりして工夫は見られるものの、結局は、ドラマを文字に起こしただけで、メディアを超えるために必要な解体と再構築が何も行われていない(ドラマのシーンを記憶に再現するための手がかりとしてならよくできてるし、あんまり変えたらファンは怒るだろうから、こんなものかもしれない)し、研究読本に至っては、元々フィクションであり、フィクションだからこそ面白いドラマを現実から眺めてどうするんだろう、というようなもの。そういう意味では、ただシナリオを収録しただけの、この本は潔い。シナリオは、元々文章だから、メディアをまたぐことも無いし、実際の映像とシナリオは、細部がやたらと違っていて、それも楽しい。この本片手にビデオを見れば、物語が具体化されていく経過を味わうこともできる。