「決定版・新パスタ宝典」
 ヴィンチェンツォ・ブオナッシージ著、西村暢夫他訳、読売新聞社、5000円

1347種のレシピを収録したデータベースのお手本

 広辞苑ほどの厚さがあるこの本は、ただひたすら、パスタ料理のレシピだけが延々と書かれている。収録数は1347。ごく簡単な家庭料理風のものから、ゴージャスな材料を使った宮廷料理、パスタをパイ生地代わりに使った料理など、あらゆり種類のパスタ料理の作り方が書かれている、まさに「宝典」と呼ぶにふさわしい本。
 そして、この本には、料理の写真などの図版は一切ない。その割り切りが凄い。この本では、メニューによって多少の違いはあるが、だいたい、1ページに二つから三つのレシピが収録されている。そこに写真を入れると、このページ数での収録レシピは半減する上に、写真を掲載するレシピとしないレシピが出てくれば、料理そのものをランク付けすることにもなる。だいたい、レシピ集における写真の役割なんて、雰囲気作りにしか過ぎないのだし、これだけのデータが収録されていれば、写真が無くて寂しいなんて言う人はいないだろう。
 データベース系のCD−ROMがつまらないのは、結局、こういう思い切りが出来なかったからだ。ビジュアルが重視される現在の日本の出版界をもう一度見直す材料としても貴重なこの本を買って、ついでに美味いパスタを食べよう。