Photoshop Tips & Tricks
カイ・クラウス著
山崎達夫訳 大島篤翻訳監修
ソフトバンク刊
5300円(税込み)CD-ROM付
ソフトの解説本というのは、何故、こんなに数多く出版されているのだろう。内容もほとんど、マニュアルを簡略化したようなものや、実用的な部分だけを抜き出して解説した物が多い。ところが、時々、妙に読んでいて面白く、しかも役に立つ解説本に当たることがある。しかし、そういう本は、何故かほとんどが海外で出版された物の翻訳なのだ。特に、Windows3.1や95の初心者向けの本などでその傾向が顕著だ。理由の一つとして、文章が上手く(翻訳によるけど)、サービス精神が旺盛だということが挙げられる。解説本にサービス精神がいらない、というのは日本の常識なのだろうけど、それが文章を読ませ、内容を理解させることの助けになっているのが海外物だ。
この、カイ・クラウスによるPhotoshopのテクニックをまとめた本も、そこに含まれる豊富なアイディアやテクニックの素晴らしさもさることながら、読んでいるだけで面白いから、スムーズに頭に入るのだ。そして、投げ出されるように提出された、テクニックの基礎や、Photoshopの機能の応用は、まるで、この本を読んだ後には、使えて当たり前のように思えてしまうほど、自然な操作だ。こうすれば、こういう時に便利、という安直さではなく、正に実用的な「使い方」を教えてくれる。僕たちは、これを読むことで、マニュアル以外の、Photoshopというソフトの可能性を知ることが出来る。本来、ソフトの解説本とは、こういうものではないのだろうか。
Photoshopは優れたソフト故に、機能に頼りやすく、ヘタすると誰が使っても似たようなイメージになりやすい。この本は、そんな危険をあらかじめ回避するためのアイディアと、その考え方を教えてくれる。操作を教えてくれる解説本が氾濫する中、これから必要とされるのは、このような、自分が行いたい表現を実現させるために必要な発想のヒントを教えてくれる本だと思う。