水木しげる「水木しげる貸本モダンホラー(上・下)」
太田出版 各2000円

デジタルの時代に、オリジナルである意味はあるのだろうか。

 既に、元の原稿も失われてしまったマンガの復刻は大変だ。原本となる状態の良い本を何冊も見つけだし、それをバラバラにして、版下を作るという作業は、お金もかかるし手間もかかる。なので、そのほとんどが失われている貸本マンガの復刻は、マニア向けの限定版となることが多い。そして、すぐに古書市場でとんでもない値段が付く。水木しげるの貸本時代の本は、復刻版でさえ一冊数万、原本だと何十万円だ。そんなレアな作品群を、誰でも読める形で提供してくれるのが「水木しげる貸本モダンホラー」。この面白さは、こういう気楽な価格で読んでこそ、充分に楽しめる。オリジナルである必要なんてどこにある。時代は、既にそうなっているはずだ。