荒俣宏、京極夏彦他著「死の本」
光琳社出版 3200円

古今東西の「死」について考察した死のガイドブック

 光琳社出版のビジュアルブック・シリーズは、クジラをテーマにした「Frippers」に始まって、「月の本」「夢の本」「時の本」ときて、今回の「死の本」で五冊目。一つのテーマを、ビジュアルと、各専門家によるエッセイや評論、物語などで構成し、さらに、ブックガイドなどの資料を付けたもので、今回の「死の本」も、いわば「死」のガイドブック。荒俣宏による、死と生の境を巡るエッセイ「死体とのお付きあい」に始まり、京極夏彦の小説、石堂藍による「死をめぐる神話群」などのテキストが、左ページに文章、右ページに死にまつわる図像というスタイルで載せられている。しかも、黒地に銀という、ホームページでは決して再現できない(モニタで金・銀を発色することは出来ない)印刷になっているのが、何となく凄い。
 この本では、メメント・モリ的ではなく、もっと博物学的に「死」についての言葉とビジュアルを並べてある。もし、同じような内容をインターネット上に流したら、自殺系ホームページと同一視されてしまいかねないけれど、それは、コンテンツをきちんと受け取ることなく、そこにある言葉を情報としてしか受け取れない人ならではの誤解。死を考えることと、死のうとすることは別物。だから、この本は結果的にエンタテインメントになっているのだ。