紅い花/つげ義春
販売元:小学館
定価:4900円
動作環境:HYBRID仕様
つげ義春のマンガをCD-ROMで見るというのは、何だか変な気分だ。僕は「ねじ式」を何故だか子供の頃に読んで、ギャグマンガだと思ってしまって、それでつげ義春のファンになったのだけれど、そういういい加減なファンの僕が見ても、紙の質感から離れて見るのは、違う物を見ている感じがする。
このCD-ROMは、「紅い花」「大場電気鍍金工業所」「ゲンセンカン主人」「リアリズムの宿」の四編が収録されている。1967年から1974年の7年間にわたって書かれた、どれも彼の代表作と言ってよい作品だ。それぞれの作品は、マンガのページをそのまま取り込んだものを、本を読むようにページをめくって読む、ページ送りモードと、淡く彩色されたコマを、効果音と共に一コマづつ読んでいく、コマ送りモードの二つの読み方が用意されている。彩色され、コマが物語の流れの一つではなく、映画のワンカットのように表示されるコマ送りモードは、試みとしては面白いし、つげ義春の絵の美しさを再確認できるが、やはり、マンガは、コマとコマの間や、コマの大きさ、並べ具合まで含めて一つの作品を作り上げているせいか、何だか、つげ義春のマンガがアニメになったみたいで、それはそれで面白いのだけれど、どうしても違和感がある。ページ送りモードも付けてあるのは正解だと思う。
でも、暗い中に漂う独自のユーモアは、こういう形態も難なく受け入れているようで、改めて、つげ義春の凄さを感じる。
(納富廉邦)
(MediaDirect CD-ROM MAGAZINE 1996.06)
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