デジタルな紙のクルマ。溝呂木陽のCARアート


 販売元:株式会社IMAGICA
  定価:5800円
動作環境:HYBRID仕様



 テレビやビデオで、動く絵を見慣れていると、テレビの画面に描いている(パソコンだからね)のに、動かない、という方が不思議かも知れない。しかし、それとは別に、描いた物を切り抜いて、立体物として遊ぶ、という楽しみ方もある。筆者が子供のころは、当たり前だけど、そちらの方が当たり前だった。切り抜く本、というものがあって、本を直接切り抜いて、紙飛行機や列車、クルマなどを作っていた。
 「デジタル紙のクルマ」は、そんな切り抜く本のCD-ROM版だ。溝呂木陽氏の著書「紙のクルマ」(二玄社)に収録されたペーパークラフト用の型紙をデジタルデータにしてCD-ROMに収録したもので、24車種、101種類のバリエーションを収めてある。
 クルマというのが、また子供、特に男の子は大好きだ。ミニカーを集めたことのある人は多いだろうし、今でも、男の子はミニカーをねだることが多い。そんな、大好きなクルマを紙で、家庭で作ることが出来るのだから嬉しい。データは、BMPやEPSファイルという形式で収録されていて、BMPならペイントブラシなどで誰でも簡単に読み込んで、あとはカラープリンタで出力すれば、綺麗な型紙が出来上がる。もっと高品質な印刷をしたかったら、EPSデータを対応するアプリケーション(Illustrator、Corel Drowなど)で取り込めば、ボディやフロントグリルなどのパーツごとのデータの加工や、色の変更がコンピュータ上で出来るし、印刷もプリンタの解像度にあわせた美しい仕上がりになる。
 かつて、切り抜く本に夢中になっていた頃、唯一の不満は、色が無いことだった(多分、印刷コストの問題だと思う)。自分で塗るのは、失敗が怖くて出来なかった。しかし、このCD-ROMなら、色が最初から付いているし、色が付いていないデータも収録されているから、失敗を恐れずに、自分で色を塗ることにチャレンジすることも出来る(データだからプリントアウトすれば、何枚でも同じ物が作れる。本はそうはいかなかったもんなあ)。モノクロプリンタしかない人でも、このモノクロのデータをプリントアウトして、ハンドメイドのカラーリングで楽しむことが出来るわけだ。色の見本はCD-ROMに入っているから、それを参考にしてもいいし、いっその事、子供に塗らせるのも楽しい。
 実際の組立も、小学生くらいなら、自分で作れる程度の簡単なものだし、もっと小さい子供でも、こんなのをお父さんに作ってもらえたら、それは嬉しいと思う。
 コンピュータで物を作るのも楽しいが、こういう、実際に手に取れるものを作る楽しさは、また格別のものだ。しかも、コンピュータを使うことで、色を変えたり、サイズや形を加工したりして、それを手に取れる形で出力するのだから、パソコンと生活の理想的な関係と言えるのではないだろうか。
 CD-ROMには、データの他に、組立方のポイントや、完成したクルマの写真や360度回転するムービー、カラーリングのサンプルや、著者溝呂木陽氏によるCarアート作品集なども収録されていて、紙のクルマの世界をたっぷりと堪能できる。
 ペーパークラフトも、デジタルアートも、どちらにせよ、子供も大人も楽しめる図画工作だ。直接、勉強の役に立つ、というわけではないけれど、こういう楽しさは、教えてあげたいし、自分でも楽しみたいと思う。親子で楽しむって、そういうことかもしれない。
(納富廉邦)
(DOS/V MAGAZINE START 1996.07)

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