THE Marilyn Monroe FILES日本語版


 販売元:メディアクエスト
  定価:7800円(税別)
動作環境:Win3.1, Win95



 マリリン・モンローの死は、未だに謎に包まれたものとして、様々な暴露本や研究本が出版されている。その手の本は、既に彼女の生誕70周年を迎える現在でも、出版され続け、その人気と、さらにはホワイトハウスをも巻き込むスキャンダルの大きさをうかがわせる。
 そんな中、遂に、マリリン・モンローものの決定版とも言えるCD-ROMが、日本語版で登場した。

 この作品は、本来、マリリン・モンローの死の謎を解く、推理アドベンチャー・ゲームなのだが、そこに収録されたデータは、モンローの死を報じた新聞記事から、検死報告書、裁判記録や提出された証拠書類、彼女の死の現場の詳細な図や、死の直前の電話リストなど、彼女の死を考えるに当たって、十分過ぎるほどの内容で、しかも、スライドショーによる詳しい生い立ちや、彼女を巡る人々とのエピソード、当時のニュースフィルムや、フィルモグラフィーなど、マリリン・モンロー自身と、その周囲に関するデータも満載されている。その全てが日本語化されている、というのも嬉しい。英語版でも十分面白い作品だったのだけど、何せ、テキストの量が半端じゃなく多いから、魅力的な資料があっても、それに目を通すだけでも大変なのだ。モンローの遺書や遺言なんかも魅力だし、凄いのになるとCIAによるフィデロ・カストロ暗殺計画の資料、なんてものまであるのだ(ケネディ兄弟を脅迫したマフィアがその暗殺計画に絡んでいたため)。それにしても、これらの書類ってどこまでホンモノなのだろう。どうも全部ホンモノみたいで、このへんがアメリカ産のCD-ROMの凄い所だと思う。
 日本未公開の資料や写真も多く、データそのものには、ゲームの進行とは関係なくアクセス出来るから、モンローのデータベースとしても、相当なものだ。彼女のファンで、でもゲームはちょっと、という人でも、これだけのデータが一枚のCD-ROMにまとまっている(文書だけではなく、音声や動画も含めて)のだから見逃せないと思う。実際、研究本や暴露本などの、著者の推論が中心になっている本と比べて、ただデータを投げ出す形で羅列してある、このCD-ROMの方が、ファンには魅力的かも知れない。ナレーションで行われる解説も、客観的な事実のみを伝えるように心がけられている。

 ゲームは、記者、地方検事、検視官、警官という四つの立場から事件を、それぞれの立場のメリットを生かして調査していくというもの。記者ならテレビ局やバーなどでの情報収集、地方検事なら裁判関係の資料などを参照しながら、それぞれの立場で、それぞれに仮説を組み立てていく。仮説は既にそれぞれが持っているパソコンに入力してあり、そこの空白部分に、それまで調べた内容を元に、人名や会社名、事件などを入力していく。全ての空欄を埋めれば、自然といくつかの結論が導かれるが、それも、それぞれの立場によって微妙に変わるので、プレイヤーは、それらの仮説をまとめて、自分の推理を組み立てなければならない。
 何せ、正解があるわけではなく、そのため、ゲーム部分で証言する様々な登場人物も、それぞれの立場、考え方で喋る。誰かの一方的な解釈をゲームの形でなぞるのではなく、自分なりの結論を導き出すために、様々な立場の人の意見を聞く、というスタイルなのが、推理アドベンチャーとしては異色だが、本当の事件を推理するという興奮は、なかなかのものだ。
 事件をとにかく推理して、何らかの結論を出すと、その推理に従って再構成されたモンローの死に関するドラマをスライドショーで見せてくれる。真実は、プレイヤーの数だけあるのだ。
(納富廉邦)
(MediaDirect CD-ROM MAGAZINE 1996.08)

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