おはなし玉手箱


 販売元:NECインターチャネル
  定価:7800円(税別)
動作環境:Win3.1, Win95



 学習でもなく、情操教育というには、ちょっとつかみ所のない分野の作品に、「おはなし玉手箱」というCD-ROMがある。簡易動く紙芝居作成ソフトだ。子供は、そこらじゅうから材料を集めてきては、勝手にストーリーをでっち上げるのが得意だ。そういう部分を伸ばすことが良いことか悪いことかは知らないが(だって、本当にこういう能力って「お勉強」には繋がらない)、自分が考えたお話が、動いたり喋ったりするのが嫌いな子供はいないのではないだろうか。そして、勉強にはならないけど、何かは確実に育つのではないかと思う(何度も言うが、役には立たない。でも大事なことだと思う)。
 用意された様々な、お話の部品を組み合わせて、好きにお話を作っていく。マンガ調から童話風、写真風なリアルなものまで用意された中から背景を選び、そこにキャラクターを置いて、そのままマウスを動かせば、その通りにキャラクターがアニメーションする。スプレーで絵を描けば、描いたとおりの軌跡をなぞるようにアニメーションする。マイクから録音すれば、好きな声や音を鳴らすことも出来るし、数字や文字を貼り付けて、絵本のような構成にすることも出来る。
 一つの画面の中だけで、ちょうど、子供が自分が描いた絵のお話を大人に説明するように、動く絵本が作られていく。
 ひとつのシーンだけで作っても楽しいし、いくつものシーンを作って、長いお話を作ることも出来る。また、自分で絵を描いたり、用意された下絵に色を塗ったり、簡単なエフェクト処理(ピカピカする壁など)が出来たり、キャラクターの大きさを変えたりと、様々な機能が満載で、全てを使いこなすのは難しいが、そこはそれ、子供がテクニックを覚えていった時に、出来ることが多いほど、表現の幅が広がるという楽しみにも繋がる。
 もちろん、ほとんどの機能を使わなくても、簡単にアニメーションを作ることが出来るし、極端な話、クルマがブーッと音を立てて画面を走るというだけでも、子供にはドラマになる(実際、これなら、クルマを選んで画面上をマウスドラッグするだけで出来てしまう)のだから、機能の豊富さは、対象年齢を広くするため、と考えることができる。
 マイクロソフトの「3Dムービーメーカー」も似たようなソフトだが、あちらは、大人が楽しめるような作りだし、ある程度のドラマを内包したスタジオ・シミュレーションだし、この「おはなし玉手箱」は、あくまでも、思いついたストーリーをとにかく形にすることを目的とした、紙芝居メーカーと、その狙いがかなり違う。物語に関する捉え方の違う、日本とアメリカの差も感じられるけど、子供には、この「おはなし玉手箱」の方がオススメだと思う。凄いものを作るより、まず、頭の中にある何かを形にするという行為の方が、ずっと実用的だし、3Dより、2Dの方が、虚構の世界に入りやすいもんね。
(納富廉邦)
(DOS/V MAGAZINE START 1996.07)

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