FUTURE SEX
販売元:KUKI
定価:5900円
動作環境:Mac, Win3.1, Win95
例えばアナタがパートナーとして、これからしばらくの間一緒にやっていく相手(異性)と、初めて組んだとするじゃない? ライターとカメラマンでも、バンドユニットの相方でも、学級委員長と書記でも、まあ間柄は何でもいいんだけど、初めて顔を合わせると思ってね。この時点では、まだ相手のコトがなーんにも判らない状態だから、例えばブスでもパートナーとして活躍するとか、美人でも役に立たなそうなら口説いてガールフレンドにしちゃうとか、とりあえずヤって逃げるとか、まあどう転んでもいい。
で、会ってみる。当然アナタは、まず彼女のルックスをチェックする。外見はイイ、スッゴク好み、連れて歩いてもオッケーどころか、自慢できるレベルとしましょう。そして会話してみると、趣味や考え方が凄く合う。行動パターンも、アナタと組むためにいるような、相棒として理想的なヒトだ、とする。
ここで、アナタはちょっと悩む。出来れば、恋人にしたいような気もするけど、このヒト以上の相棒は、たぶんこの先見つからないだろう。そして、両立するのはちょっと難しいよなーなんて、ちょっとマジに考えてると、いつの間にか彼女は自分からハダカになって、アナタのちんぽを咥え込み、いや嬉しいんだけど、それじゃあオレが今迷ってたコトって、どーなっちゃうワケ? なーんて言う暇もないまま気持ち良くセックスしてしまって、一体何なんだコイツは、と、ちょっと気味悪くなったり、裏があるんじゃないかと疑ったりするんだけど、結局アナタは何も努力せず手間もかけず、パートナーもセックスも(もしかしたらちょっとした愛も)手に入れちゃった、と思ってよ。欲しかったモノはみんな手に入れたのに、なぜかモノ足りない、どうしてか、満足できない……そんな気分が残る。
と、長い長い前フリだったけど、この「FUTURE SEX」で遊んだ後の気分は、まさにそんなカンジなのだ。正直言って、この作品はグーなのかバッドなのか、ワタシには良く判んないっす(って、そんな無責任な〜)。
2020年、地球全土を巻き込むウイルスの大流行、未曾有の“バイオハザード”が発生。この“ブリュンヒルド”ウイルスに侵された人間は、数十時間でミュータント化し、60%の確率で死に至る。人々はパニックを起こし、やがて各国家が機能を停止した。2029年、主人公はスラム化した新宿に足を踏み入れる。目的は謎の研究者“M”の持つワクチンである……という、近未来SFというかサイバーパンク(ちょっと古いけど)な心踊る設定。そして主人公が訪れるクラブ“gush”の、映像のカッコ良さ! 感染者=ミュータント達のタマリ場は、実際のクラブでロケ(こりゃ渋谷“CAVE”だね!)してCG処理。ポイント以外は静止画にして、画面いっぱいに映したのは大成功してるし、ミュータント達を、動物の仮面(CG合成?)をつけたBDファッションの人々で表現したのも、不気味でキッチュでハイセンスで退廃的で、かなりイイ感じ。ボタンを使わず、カーソルの変化だけの操作、セリフ字幕のインターフェイスもお見事! で、特筆すべきは音楽。アダルト界で今一番音楽がカッコいいKUKIらしく、全編ハウス系ダンスミュージックが流れる(これが映像に合うのよ〜)んだけど、プレイヤーがDJブースに上がり、8曲から選曲&スクラッチできちゃったりという趣向があったりもするのだ。ゲームのDJシーンにあるような、インチキっぽい音じゃなくて、どれもきちんと作られているのがエラい。
主人公はミュータント達に片っ端から話しかけたり、というインタラクティブ・ムービーの常套で、幾つかのナンバーを手に入れる。未来型のセックスというか、ウイルスのせいで、オッパイ丸出しのギャルに誘われても生じゃなく“サイ・ファック”しなくちゃイケナイとか、ディテールが凝ってるじゃない。まあ見る分には同じようなもんなんだけど、ここからどうなっていくのか、ちょっとワクワクしてたのよ、ワタシは。
なのに、そこまでしといて、というかなんというか、主人公がウロウロするステージはココだけ。無事ナンバーを集めたら、イキナリ謎のハズだった“M”にご対面! え〜っ、そ、それってもうエンディングってコト? が、愕然……。
でもね、ここには水野愛ちゃん、浅香クリスティちゃん、芹沢あゆみちゃんなどなどのムービーが6本。これでただ終るんならまぎれもない「駄作」なんだけど、その高画質のムービーを見ていると、ああ、こっちがメインなんだもんねと、つい納得させられてしまいそうになるのだ。あのクラブ“gush”のシーンは、前半のムービーを見せる&ここのムービーに辿り着くパスワードを探すためだけの、オープニングに過ぎないのかも知れないなーなんて思いそうになっちゃうのよ〜。そっちをメインに据えて考えるなら(Hモノのくせにインタラクティブ・ムービーみたいなカッタルいのは嫌い!というヒトは案外多い)、確かにこのドラマ部分のボリュームは程良いし、クオリティも高い。だから長編が見たかったんだけど、う〜ん、それって贅沢?? ご自分の目で確かめてチョーダイ!
(吉田メグミ)
(MediaDirect CD-ROM MAGAZINE 1996.03)
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