日本プロレス全史
販売元:コロンビア
定価:12800円(税別)
動作環境:HYBRID仕様
プロレスは世代を越えたものではなく、世代に付随するものだと私は思う。なぜならプロレスが生み出すものは「ヒーロー」だからである。ヒーローが本当の意味でヒーローたり得るのは子供たちにとってである。だから人は子供の頃に見たプロレスのヒーローに強烈に影響され、それは一生涯不変のヒーロー像として個々人の潜在意識の中に刷り込まれるのである。ちなみに私の親父は熱狂的な力道山のファン(というか当時は全日本国民がそうだったらしいが)で、息子の名前にその一文字をもらってしまったほどである。私にとっては「プロレス=猪木神話」であり、いかにしてすばやく正確に卍固めをかけることができるかが、人間関係を根本から変える大問題であった。とはいえ、完全に力道山に集約されていた時代とは違い、われわれは全日派、新日派で対立し、その後、全日派は、鶴田派、天竜派、ハンセン派など、新日派は、藤波派、維新軍派、タイガーマスク派など、どんどん細分化されていった。今ではプロレス団体さえも細分化され過ぎたため、ヒーローもすっかり小粒化した感があるが、現在を子供として体験する世代にとっては、それぞれ無比のヒーローとしてのレスラーが存在するのだろう。でもやっぱりゴールデンタイムのテレビ中継がなくっちゃなあ……。
このCD-ROMは基本的にプロレスのデータベース及びプロレス論をまとめたものである。年代別及び歴史系統別に見たプロレスは、その世代もの的性格から、昭和の時代を検証するひとつの大きな側面となり得るものだ。そういった意味でこのCD-ROMの資料的価値は高い。だが、これがそれぞれのヒーロー像を蘇らせることができるかといえば、答えは全くのNOである。やはりプロレスのヒーローは、あの夏の夜、夕食をそっちのけで小さな拳を振り上げ応援した、ゴングと同時に胸の中をめくるめく感動があふれた、あの1つ1つの瞬間に縫いつけられたまま、取り戻せないものなのだ。
(石田力)
(MacFan 1995.09)
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